ゆの里TOP >> コラム「 橋本市の橋本さんは、いのちの野菜を作っています。」

橋本市の橋本さんは、いのちの野菜を作っています。

物は作り手の顔が出る。橋本さんの野菜のピュアな味は、まさに、このお人柄です。人参、最高でした!

『ゆの里通信』Vol.9 あの人に会いたい〈橋本自然農苑代表 橋本 進さん〉

自然農法は生き方。単に野菜栽培ではありません。

宅配野菜は神野々の湧水洗いで出荷。レベルが高い「オーガニックエコフェスタ」で連続最優秀賞を獲得した野菜もあります。

 「越してきてすぐのアパートは橋本市神野々。行ってきますと玄関を出ると、正面に「ゆの里」さんが見えるほど近くて(笑)。でも、年に数回、お風呂に入る程度の知識しかなくて、縁っておもしろいですね」
 橋本さんは奈良県大和郡山出身。自然農法で農業をやりたくて、この地に引っ越したときは、まだ30歳前でした。
 実家はサラリーマン家庭。自身も宅配会社に勤めたりして、農業の経験はなかったけれど、自然農法に取り組む知り合いの先輩の畑を手伝ったとき、刈り取った稲を「はさ掛け」にした風景を目にして、ビビッと来ました。
 「夕暮れになり、あたり一面、黄金色に染まってきて……。ほんとうにその風景が美しく、ミレーの絵画の世界のようでした。よし、これで世の中の役に立とうと、その時、決めたんです」
 とはいえ、そう簡単に希望する農地は見つからない。探しあぐねていたときに、知人から「橋本にあるよ」とお誘いの声がかかります。
 「僕の名前も橋本だし(笑)、ちょうどいい、すぐに行きます!」
 農地も見ずに即答で決めた移住先が、なんと「ゆの里」のご近所。神野々だったというわけです。
 「ゆの里がこんなに凄いところとは知らなくて、お風呂に行くとアトピーの方の話が壁に貼られているし、へぇ、温泉が身体にいいんやなぁと思っていた程度です。まったく水のことも知りませんでした。その時、重岡社長に会っていたとしても、当時は自分のレベルが低過ぎて、話にもならなかったと思います」
 自然農法といえば、無農薬・無肥料で育てた「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんが有名ですが、ネットの検索サイトWikipedia(ウイキペディア)には、
 自然農法とは、不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)を特徴とする農法と書き込まれています。
 耕起や除草を許すかどうかは、各自の取り組みの差がありますが、橋本さんの自然農法は、「秀明自然農法」と呼ばれ、岡田茂吉氏が提唱した栽培方法だそうです。
 実際、農薬はもとより、肥料も一切与えない土地から、みずみずしい作物が取れるのを目の当たりにすると、手品を見るような不思議な気分になります。
 「普通の人は信じられない、なんで?ってなりますよね。このなんで?を、追及していくと、生命の神秘が見えてくるんです。僕は自然農法は生き方を教えてくれるもの。単なる栽培方法じゃないと思っています」
 5ヘクタール強の農地には40~50品目の作物が栽培されています。「橋本自然農苑」の最大の特長は、この収穫された作物のすべてが「自家採種」であることです。
 「生命の勉強をするのに、いちばんいい教材が自家採種なのです。つまり、それは、野菜の一生が見られるということ。一般の農家さんだったら、たとえば大根を収穫したらそれで終わりですが、僕らは、とうが立って花が咲き、実がなってタネができてと、その植物の一生を毎年見ることができる。一生、付き合えるんですね」
 世の中の多くのタネは、F1種と呼ばれる一代限りのもの。次の世代にバトンタッチすることがない一過性の植物です。
 ただ「自家採種」と書くのは簡単だけれど、その手間暇、労力は相当なもの。「ゆの里」でも試みていますが、まだまだ「橋本自然農苑」の足元にも及びません。
 収穫量を安定させ、事業として成り立っているのですから、「単に野菜栽培ではありません」と言う橋本さんの言葉に重みがあります。
 「自然農法には、メッセージ性があります。毎日、成長を見ることで気づきもいっぱい。感動の連続です。そのことをいま、一緒に共感できたらと思って、研修生の受け入れを積極的に始めました」
 研修生たちは素人だからこそ「素直に感動を持ち帰ってくれる」と橋本さん。
 「僕が就農1年目のとき、無肥料でちゃんとできるのかどうか疑問を抱きながら収穫できたときの感動、そして、その野菜を食べて、むちゃくちゃおいしかった感動です。昔は好きじゃなかったナスなんて、スライスして油でさっと焼いて醤油をつけるだけで、絶品! 何も言わなくても、わかります」
 今年は6名の研修生を10名に増員して、身をもって感動するチャンスを提供していく予定だそうです。

重岡社長は自然農法の真髄を教えてくれました。

橋本自然農苑は、この看板が目印です。

 今年で就農生活20年目を迎える橋本さんの口からは、絶えず、重岡社長の話が登場します。20年近く、すれ違って社長の姿さえ見たことがなかったのに、お互いが出会って、急に親近感が増したのはこの1年。橋本さんには、いま、「ゆの里ファーム」のアドバイザー役もお願いしています。
 「初めて重岡社長から水の話を聞いた時は、衝撃でしたね。これまでいろいろなところで、いろいろな方の講演を聞いてきましたが、あれほど感動したことはない。僕が自然農法で学んできたことを、社長は水を通して語ってくれたんです。しかも、その話が、ものすごくわかりやすかった。
 反発するところが一つもなく、(笑)。もう、20年分の感動です」
 「ゆの里」をまだよく理解していないころ、「ゆの里ファーム」のスタッフが橋本さんを訪ねてきたことがあったそうです。
 「水耕栽培を有機でやるんですと聞いて、えっ?と思った。有機? 水耕栽培? 農業をしている者からすると、コトバからして矛盾しているやんかと。マジメでいい子たちだけど、おかしなとこやなぁと思いました(笑)」
 「ゆの里」が有機の水耕栽培に取り組んだのは、平成20年。
そんなことをしていたら、水が腐ってしまうよと、専門家から口々に言われ続けても、「ゆの里」のお水なら、見事、実現。腐るどころか、植物は根を張り続けて、1本の苗からメロンやトマトがたわわに実りました。
 「自然農法には、〝火は水によって燃え、水は火によって動く〟という教えがあります。それを重岡社長にぶつけると、火を光や熱に置きかえて、水との関係性をさらりと教えてくれました。自然農法の真髄を、農業の素人の方が教えてくれたのです」
 無肥料から野菜が収穫できる自然農法は、20年くらい前までは迷信だと思われたこともありました。でも、それはお水と同じようやく科学の根拠で解き明かされてきた。お水の話を聞けば聞くほど、生命の仕組みが見えてきて、人間の意識改革にもつながると、橋本さんは確信しています。「それが、この橋本で見られるんです。僕は引き寄せられましたね」
 お土産にもらった堀り立ての人参を、さっと泥を落としてかぶりつく。人参がリンゴのようなフレッシュさで、甘さが舌にじんわり残る。
 自家採種を続けていくと、どんどん「種が清らかになる」と言う橋本さんの言葉が、野菜を口にすると実感できます。
 「ゆの里」は今年創業30年。節目節目に大きな変化があっても、それを乗り越え「変化」を「進化」と捉えてきました。同じように、その地続きの「ご近所」で20年間、土と対峙しながら、さまざまな困難もあっただろうに、静かに誇示することなく、見事な野菜を作っていた橋本さん。その存在を思うと、なんだか胸のあたりが熱くなります。
 「自然農法は、技術だけ広がることはあり得ないと思っています。意識が変わることにつられて、広がっていくのですね。みなさんにお話しても、いいのはわかっていても、いざ、自分でやるとなると、なかなか始められない。意識がいちばん大きなカギです」
 橋本市の橋本さんは、「ゆの里」のご近所さん。特集「ゆの里 ご近所暮らし」の提案は、この場所に「暮らす」人たちのネットワークをつくっていくこと。
 「暮らす」スタイルは各自さまざま。「ゆの里」を入口にして、アプローチしていただければと思います。